【魅力ある褒め方】発見!異文化コミュニケーション#003

【魅力ある褒め方】発見!異文化コミュニケーション#003

こんにちは!

 

日本を離れ、

オーストラリアへ移住することにした

伝え方研究所の杉です。

 

この連載では、

日本と海外の文化の違いを、

コミュニケーションの視点で紹介します。

 

第3回は、

私が英語をまなぶシドニーの学校で発見した、

先生たちの“魅力あるほめ方”を紹介します。

 

「ほめて育てよ」という言葉が、

日本の学校やビジネス現場でも

かなり浸透してきています。

 

ですが、海外の「ほめる」は、

日本のそれとは、ちょっと段違いでした。

 

日本人がまなぶべき点が、

まだまだ、たくさんありそうです。

 

学校やビジネスの場で、

教育にかかわる人、必読です。

 

 

ほめて、ほめて、ほめまくる

 

シドニー市街地の中心にある

英語学校に通い始めて、数ヶ月。

 

学校には、アジア、南アメリカ、ヨーロッパなど、

世界中いろいろな国々から学生が集まります。

 

さらに、年齢も17歳から40代まで幅広く、

まさに「マルチカルチャー」という表現が

ピッタリな、多文化空間。

 

文化も考え方も、これまで受けてきた教育も

まったく異なる人たちに、

先生は果たしてどう接するのか?

 

そのことに、入学前から気になっていたのです。

 

 

いざ、授業がはじまって、とにかく痛感するのは、

 

「しょっちゅう、ほめられる」

 

ということです。

 

・以前は話せなかったことが、話せるようになった
・少し難しい構文をつかって文章を書けた
・ありきたりな単語をつかわずに感情を表現できた
・複雑なストーリーを正確に聞き取ることができた

 

などなど、

 

生徒が

「できるようになったこと」「挑戦したこと」に、

敏感なレーダーを働かせる先生の姿が印象的です。

 

逆に、たとえ間違えても、失敗しても、

残念な顔をされたり、叱られたりしたことは

一度もありません。

 

間違いをとがめるよりも、

大量の「ほめ」を浴びさせることによって

正しい方向へみちびくことが

「望ましい」とされているのです。

 

 

「ほめ」は生産性アップをもたらす

 

たとえば、

 

“Well done!”(よくできました!)
“Great question!”(すばらしい質問だね!)

 

は、先生がよく口にする2大「お決まりフレーズ」。

 

みなの前で何かを質問したときや、

自分の体験を英語で話そうと試みたときなど、

1日になんどもとんでくるのです。

ところで、こうしたほめ言葉が、

「個人に対するフィードバック」

であるという以上に、

学びの生産性をかんがえるうえで

「ある重要な効果」をもたらすと気づいたのは、

入学から2週間ほど経ったころでした。

 

ひとクラスの生徒は約20人。

 

すぐに人と打ち解ける

オープンマインドな人ももちろんいますが、

「みなの前で間違ったら恥ずかしい」と、

ほとんど発言しない生徒も案外、

少なくありません。

 

なかでも特にシャイだったのが、

25歳のタイ人学生・チェン君。

 

はじめは、先生がなにを質問しても、

「んー・・・・・・」

とモジモジするばかりだったのです。

 

ところが、クラス中が先生の

「ほめシャワー」を浴びつづけること、約2週間。

 

なんとチェン君は、

ときに先生の話にかぶせてまで、

自ら進んで(しかも、うれしそうに)

発言するようになったのです。

さて、なぜ、そんな変化がおきたのか。

 

“Well done!”(よくできました!)
“Great question!”(すばらしい質問だね!)

 

こうしたほめ言葉を聞き続けることで、

「たとえ間違えてもだいじょうぶ」という

心理的な安心感がクラス中に醸成されたのが、

なによりも大きかったのだと思います。

 

ほめ言葉は、安心を生む。

 

そして、勉強やパフォーマンスの障害となる

ストレスや不安を遠ざける。

 

それも、たったの2週間で。

 

そんな魔法の効果を実感したのです。

 

 

「ほめる」の効果をアップさせる秘訣

 

ただし、「ほめ言葉」の効果を

最大のものにするには、

条件があるようです。

 

条件① ほめの回数をできるだけたくさん取ること

 

まずは、頻度です。

 

先生は1時間に10回は、ほめ言葉を口にします。

 

こうやって字面で読むと、

やや「やりすぎ」な感じがするかもしれませんが、

生徒側からすれば、まったく「くどい」とは感じません。

 

ほんの一例ですが、たとえば、

 

“Your speaking has a wide variety of verb tenses!”
(スピーキングで、いろんな動詞の時制を使ってるね!)
“You can express yourself confidently and colorfully. Amazing!”
(自信をもって、カラフルに表現できてる。驚きだわ!)

 

などなど。

 

ほめられるたびに、うれしさを感じるものです。

 

 

条件② 感情的に、ほめること

 

頻度とおなじくらい大事だと感じるのは、

ほめ言葉が「ホンモノか」ということです。

 

先生たちを見ていて気づかされるのは、

ほめ言葉に「感情が乗っている」ということ。

 

たとえば

 

“Excellent! Continue to work hard and grow your vocabulary!”
(すばらしい!この調子で努力を続けて、語彙を増やしていってね!)

 

というほめ言葉でも、

“WOW!”のような感嘆符にはじまり、

満面の笑みや両手を広げる動作など、

とにかく「うれしい感情」を文字どおり

「全身で」表現します。

 

「感情でほめる」ことを意識することで、

仏頂面でほめるときと比べ、

相手には格段に強いリアリティが

感じられるはずです。

 

また、先生のうれしそうな表情とともに、

ほめられた体験が記憶にも残りやすいのです。

 

自分の成長を心から

いっしょに喜んでくれる人の存在はとても心強く、

信頼感がわくものです。

 

 

条件③ 全員の前で、褒める

 

そして、ほめ言葉の効果を高める

3つ目の条件は、

みなの前でほめるということ。

 

たとえば

 

“Your hard work and enthusiasm in class is an inspiration to all!”
(あなたの努力と熱意は、クラスのみんなにインスピレーションを与えてる!)

 

といった言葉で、場を盛り上げていきます。

 

授業は基本的には挙手制で進みますが、

ほかの生徒がほめられる姿を

なんどもみるうちに、

徐々に発言する人が増えていくという

好循環が生まれています。

 

かりに先生が、生徒を

一人ずつ個室によんで褒めたのであれば、

こうした変化は限定されたでしょう。

 

「ほめて育てよ」論は、

日本の教育現場だけでなく、

ビジネスでもずいぶん

聞きなじみがあるものになっていますが、

チーム全体を効率的に

良い方向にみちびくうえで、

ぜひ、まねしたいコミュニケーションの

知恵のひとつです。

さて、ほめ言葉の効果を高めるために

意識できる3つの条件。

最後に、もう一度おさらいです。

 

条件① ほめの回数をできるだけたくさん取ること
条件② 感情的に、褒めること
条件③ 全員の前で、褒める

 

教育現場やビジネスの新人教育など、

育成に頭を悩ませている人は、

ぜひ一度、試してみてください。

 

 

さいごに

 

「英語がペラペラになれたら良いなあ・・・・・・」

 

私がそんな風にぼんやりと思い続けて、幾星霜。

 

でも、心に思っているだけで

物事が実現するほど、

世の中、甘くはないものです。

 

お年寄りになって、

身体に自由が利かなくなった自分が、

窓の外を見やり、

 

「英語、ペラペラになれたら良いなあ・・・・・・」

 

という全く同じセリフを

口にする姿をふと想像したとき、

ゾッと身震いする思いがしました。

 

そして、心に決めたのです。

 

「そうだ、海外移住しよう」――。

 

筆者はオーストラリア・シドニーに

移り住むことにしました。

 

現地で英語を勉強し、

世界中の人びとと自由に

コミュニケーションできるようになるためです。

 

日本とは異なる文化や考え方をもつ

外国人と関わると、新しい発見が、

きっとたくさん得られるはずです。

 

それは、多くの日本人が思い込んでいる

「当たり前」を問い直す気づきかもしれません。

 

あるいは、今までぼんやりと信じていた考えに、

「やっぱり正しかった!」という“お墨つき”を

与える体験かもしれません。

 

このコーナーでは、

現地で発見したコミュニケーションの知恵を、

できるだけありのままに、

皆さんにお伝えしていきます。

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